2020/12/17

PMBOKの5つの流れと知識エリア10個を解説|PMP試験についても紹介

 
  

PMBOKとは


PMBOKとは、「A Guide to the Project Management Body of Knowledge」というガイドブックにもとづく知識体系のことです。

プロジェクトマネジメントを実施するうえで、理解しておくべき知識をまとめたアメリカ発のガイドラインで、プロジェクトの立ち上げから終結までのプロセスがまとめられています。

プロジェクトマネジメントとは

プロジェクトマネジメントとは、プロジェクトの管理業務のことであり、QCDといわれる「品質」「費用」「納期」の管理を行い、プロジェクトを成功に導くための技術です。

プロジェクトごとに取り組む期間や業務内容、達成目標などが異なるので、マニュアル通りに進めれば成功するというものではありません。成功に導くためには多くの知識が必要になり、自分の経験にない知識を得ることも必要です。

PMBOKを導入するメリット

PMBOKを導入するメリットとはなんでしょうか。PMBOKは、PMIが提唱するプロジェクトを成功に導くための知識体系が網羅されており、あらゆるプロジェクトの立ち上げから終結まで整理されています。

つまり、PMBOKとはプロジェクトの雛形であり、プロジェクトを確実に成功に導くための知識が詰まっています。経験だけではカバーできない知識が体系化されているということの重要さを十分にご理解ください。

PMBOKを一読すれば、ご自身の経験でカバーしていた部分が網羅的に可視化されており、有用性をご理解いただけます。

PMBOKの5つの流れ


PMBOKではプロジェクトの開始から完了まで流れを、「立ち上げ」「計画」「実行」「監視・コントロール」「終結」という5つのプロセスにわけて定義しています。

PMBOKの導入を検討している場合、これらの5つのプロセスについてそれぞれそのような内容になっているのか知っておくことが重要です。

ここではPMBOKの5つの流れについてご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

1:立ち上げ

PMBOKの「立ち上げ」のプロセスとは、プロジェクトを開始する前に行うプロセスです。

立ち上げとはプロジェクトを開始する認可を得るためのプロセスです。立ち上げのプロセスでは、プロジェクトに必要な「プロジェクトの目的」「目標」「予算」「成果」などを定義します。

また、定義した項目からプロジェクト憲章を作成したり、プロジェクトのステークホルダーの特定などを実施したりします。

2:計画

PMBOKの「計画」のプロセスとは、プロジェクトの作業計画を作成するプロセスです。

計画のプロセスでは、プロジェクトの目的やプロジェクトを達成するための計画立案と作成を行います。計画のプロセスでは20ものの細かいプロセスを定義します。

計画のプロセスでは、目標の定義を行い、洗練し、さらにプロジェクトを実行する際の一連の行動の流れについても規定することになります。

3:実行

PMBOKの「実行」のプロセスとは、プロジェクトを実行するプロセスです。

実行のプロセスでは計画のプロセスで立案された計画に基づいて、プロジェクトに必要な人員配置や資源の調整などを行い、プロジェクトを実行に移します。

実行のプロセスは5つのプロセスの中でももっとも資源を必要とするプロセスです。また、結果によっては改めて計画を更新し、基準線を再設定する必要があります。

4:監視・コントロール

PMBOKの「監視・コントロール」のプロセスとは、実行中のプロジェクトを継続的にチェックするプロセスです。

監視・コントロールのプロセスは、実施されているプロジェクトが設定されている計画と差異が発生していないかどうかを継続的に監視します。

また、監視によって計画との差異が見つかった場合には、適宜是正することでプロジェクトのコントロールを行い、修正をおこないます。

5:終結

PMBOKの「終結」のプロセスとは、すべてのプロセスが完了していることを検証してプロジェクトを終結するプロセスです。

終結のプロセスは、所定のプロセスがすべて完了しているかどうかを検証し、プロジェクトを公式に終了するものです。

また、ただ単に終わるだけでなく、プロジェクトを実行した結果得た情報や経験などを保管し、新しいプロジェクトに役立てることが大切とされています。

PMBOKの知識エリア10個


PMBOKには、プロジェクトマネジメントを行う際に必要な10個の知識エリアがあります。

PMBOKにおける10個の知識エリアとは、プロジェクトマネジメントを実施する上で必要となる知識を10個にわけ、それぞれ定義したものです。知識エリアは前述のプロセスのすべてで必要なものと、一部で必要なものがあります。

ここではPMBOKの知識エリア10個をご紹介しますので、どのような知識エリアがあるのか参考にしてみてはいかがでしょうか。

1:総合マネジメント

PMBOKの10個の知識エリアの「総合マネジメント」とは、プロジェクト全体の方針を決めて調整を行うものです。

総合マネジメントは他の9つの知識エリアすべてをとりまとめ、プロジェクト全体を統一し、マネジメントするためのものです。プロジェクトマネジメントの中核となる必要不可欠な要素となっており、プロジェクトマネジメントの土台となる役割を持ちます。

そのため、すべてのプロセスに関わっています。

2:スケジュールマネジメント

PMBOKの10個の知識エリアの「スケジュールマネジメント」とは、時間の管理などを行うものです。

もともとは「タイムマネジメント」と呼ばれていましたが、2017年のPMBOKの第6版のリリースにともなって「スケジュールマネジメント」に変更されました。

時間当たりの生産性を高める目的で時間管理を行うことから、スケジュールマネジメントはプロジェクトの推進に必要不可欠です。

3:品質マネジメント

PMBOKの10個の知識エリアの「品質マネジメント」とは、プロジェクトにおけるプロセスや成果物の品質管理を行うものです。

品質マネジメントでは、品質を担保するための検査項目などを策定し、品質の測定を行い、改善活動を行います。

また、ここでいう品質とは、成果物が顧客の供給に一致しているかどうか、使用に適しているかどうかなどです。そのため、顧客のニーズを正確にとらえる必要があります。

4:コストマネジメント

PMBOKの10個の知識エリアの「コストマネジメント」とは、プロジェクトにおけるコストの見積もりや予算設定などを行うものです。

プロジェクトを予算の範囲内で終わらせるために、現実的な予算の組み立てやコストの見積もり、コストコントロールを行うのがコストマネジメントです。

コストマネジメントでは無駄なコストができるだけ発生ししないように、しっかりと管理を行う必要があります。

5:コミュニケーションマネジメント

PMBOKの10個の知識エリアの「コミュニケーションマネジメント」とは、プロジェクトにステークホルダーとのコミュニケーションを行うものです。

プロジェクトにおける利害関係者と適切なコミュニケーションをおこなうためのもので、プロジェクト情報の生成や収集、配布、保管、検索、廃棄などを担います。

利害関係者に対してただ単に情報を伝えるだけでなく、相手からの理解を得ることが重要です。

6:スコープマネジメント

PMBOKの10個の知識エリアの「スコープマネジメント」とは、プロジェクトの目標を達成するために範囲を定めたうえで必要な成果物やタスクを定義し、確実な目標達成を目指すものです。

スコープマネジメントは目標達成のために必要な作業をスコープを定めたうえで必要になるタスクや成果物を漏れなく洗い出す作業です。

目標達成を確実に行うために必要不可欠な分野で、プロジェクトの成否に影響します。

7:リスクマネジメント

PMBOKの10個の知識エリアの「リスクマネジメント」とは、プロジェクトにおけるリスクを予防、コントロールするものです。

リスクマネジメントではリスクの洗い出しや分析、対応の優先順位を付ける作業などを行うことで、リスクに対する対応策を検討します。

ただし、リスクを避けてばかりではチャンスも逃しかねないため、プロジェクトにとってマイナスのリスクを予防するために行われます。

8:資源マネジメント

PMBOKの10個の知識エリアの「資源マネジメント」とは、プロジェクトの目標達成のための資源の調査や管理を行うものです。

プロジェクトに必要な人、モノ、カネといった資源の見積もりや、確保、管理、活用方法などを定義します。

もともとは「人的資源マネジメント」と呼ばれていましたが、2017年のPMBOKの第6版のリリースにともなって「資源マネジメント」に名称と内容の変更が行われました。

9:ステークホルダーマネジメント

PMBOKの10個の知識エリアの「ステークホルダーマネジメント」とは、プロジェクトのステークホルダーに対して必要な情報の収集、伝達を行うものです。

利害関係者との良好な関係を築くために、関係を計画的に管理する分野です。もともとは「コミュニケージョンマネジメント」の一部でしたが、2012年のPMBOKの第5版のリリースにともなって10個目の知識エリアとして独立しました。

10:調達マネジメント

PMBOKの10個の知識エリアの「調達マネジメント」とは、プロジェクトの作業に必要なものを外部から調達するものです。

調達マネジメントでは、プロダクトやサービスなどの作業実行に必要なものを購入する際の管理を行います。業者の管理や購入時の契約はもちろん、必要なものの選定や納品の進捗管理、検収などの調達に関するすべての管理を担います。

基本的には契約のためのマネジメントとなります。

PMP試験とは


PMBOKをもとにしたプロジェクト管理のスキルを問う試験が「PMP資格試験」です。PMP資格は、国際標準資格なので世界で通用します。

PMP資格は、おもにIT業界で資格取得が広まっていますが、IT業界以外でもマネジメントスキルの評価基準として認知されています。

試験は、コンピューターを使って実施され、問題は英語で表示されます。翻訳機能で和訳されますが、原文が理解できる程度の英語力があった方が有利です。

出典:一般社団法人 PMI日本支部
参照:https://www.pmi-japan.org/pmp_license/

PMP資格取得のメリット

PMP資格を取得することで、世界共通のプロジェクトマネジメントの資格を得ることができます。

PMP資格は国際資格となっているため、海外で広く認知されています。そのため、外資系企業への転職を検討している方や、将来外国で仕事をしたいという方の場合、資格取得のメリットが大きいです。

また、PMP資格はIT業界だけでなくさまざまな業界で通用する資格なので、スキルアップやキャリアアップに役立つでしょう。

PMP試験の難易度

PMP試験の難易度は、どれくらいでしょうか。IPAの情報処理試験と比較すると、高度情報処理資格である、ITストラテジスト、プロジェクトマネージャー、システムアーキテクトより難易度が低いという見方が多いでしょう。

これは、試験形式がPMP試験はCBT方式であることに対して、情報処理試験は筆記、論文であることが要因で、また、PMP試験はプロジェクトマネジメントに精通した方であれば経験則で正答できることが多々あること、35PDUを取得する過程で一定の知識を得ていることも要因です。

PMP試験の受験資格について


PMP試験を受験するためには、クリアしなければならない条件があります。以下に紹介する2つの条件を満たせば、PMP試験を受験することが可能です。

PMP試験は受験資格を得たあと、同一年内で3回まで受験できます。1年間で3回不合格になると、向こう1年はPMP試験を受験できなくなります。PMP試験を受験する際は、十分に対策して望むようにしましょう。

プロジェクトを指揮・監督する立場でのマネジメント経験者

PMP試験を受験するためには、一定期間のプロジェクトマネジメント経験が必要ですので、ご自身の状況に照らし合わせて確認しましょう。

具体的には、大卒以上であれば、プロジェクトマネジメント経験36ヶ月が必要で、高卒・短大卒であれば、プロジェクトマネジメント経験60ヶ月が必要です。以前は実務時間が必要でしたが、現在は不要になっています。

PMP試験が要求するプロジェクトマネジメント経験については、受験時に提示する必要があります。そのため、PMP試験受験に向けて、日頃からご自身のプロジェクトマネジメントの成果やポートフォリオを作成しておくべきでしょう。

公式なプロジェクトマネジメント研修を35時間受講した者

PMP試験を受験するためには、公式なプロジェクトマネジメント研修(PDU)を何らかの形式で35時間受講する必要があります。1時間を1PDUという単位で管理します。

PMI日本支部主催研修や社内研修、社外研修、セミナーなどで35PDU分の証明書を集めることで、PMP受験が可能です。

実務経験と同様、試験申し込み時に提示を求められるので、35PDU分の証明書は無くさないよう補完しましょう。

PMP試験の概要4つ


ここでは、PMP試験の概要を、試験形式、出題範囲、試験の申し込み、申込後の監査について解説いたします。なお、PMP試験は2021年初頭に内容が刷新されています。試験内容が変更されていることを念頭に、以下の試験概要を確認しましょう。

試験の紹介でも述べた通り、英語ベースで進めますが、翻訳や参考サイトを見つければ試験時以外は十分に対応できます。

1:試験形式について

PMP資格試験はCBT(Computer Based Testing)を使用した試験で、多肢選択問題、複数回答問題、マッチング問題、ホットスポット問題、穴埋め問題などの形式で出題されます。

PMP試験の時間は230分、問題数は180問です。問題は日本語ですが、英語など他の言語を選択することもできます。なお、試験の間に10分の休憩を2回取ることができます。

PMP試験はCBT形式の試験なので、試験の合否は即時行われます。また、試験は日本全国にあるピアソンVUE試験会場、もしくはオンラインで受験することができます。

2:出題範囲について

PMP試験はPMBOK第6版から問題が出題されています。

プロジェクトマネジメントの技術は日々進歩しており、出題内容はPMBOKの改訂にかかわらず、潮流に合わせた内容にアップデートされます。

現時点ではPMBOK第6版からの出題となります。PMP試験の出題の範囲は「PEOPLE」が42%、「PROCESS」が50%、「BUSSINESS ENVIRONMENT」が8%となっており、人やプロセス、ビジネス環境から出題されます。

また、PMP試験は定期的に見直されており、現在は予測型プロジェクトマネジメントアプローチが50%、アジャイル型・ハイブリッド型アプローチが50%に関するものと構成が変わっています。

3:試験の申し込みについて

PMP試験の受験申請には、いくつかのステップがあります。

まず、米国PMIのホームページ(英語)でPMIアカウントを作成し、受験申し込みを行いましょう。申し込み時、学歴情報、プロジェクト経験情報、受験に関連する詳細情報の3つのカテゴリを入力します。

入力項目の3つのカテゴリを入力し、申し込みを行うと、PMIによる監査が行われ、PMIの監査をクリアした後、PMP試験に申し込みが可能です。

受験資格を得たら、ピアソン社のホームページからPMP試験の受験を申し込みます。受験費用は、PMI会員の場合405USドル(再受験の場合はUS275ドル)、PMI非会員の場合555USドル(再受験の場合は375USドル)です。

4:監査について

PMP試験の受験申し込みについて、PMIから受験申し込み者に対して個別に監査が入ることがあります。監査対象となった場合は、受験資格を証明する書類の提出が必要となります。

大学の卒業証明書、プロジェクトマネジメント経験の上司承認、35PDUを取得した分の証明書、などです。PMP試験を受験する場合は、監査を想定し、受験申し込み時に準備しておきましょう。

PMBOKの勉強方法


PMP試験を受験する場合は、所定の研修が義務付けられているので、研修の中でPMBOKの基礎知識を学べます。

PMP試験を受験するかは決めていないけれど、PMBOKについて学んでみたいという人もいることでしょう。ここでは、PMBOKを自習する方法を2つ紹介します。

PMBOKガイドを活用

PMBOKガイドの最新版をPMI本部のサイトから購入できます。PMBOKガイドはプロジェクトマネジメントのプロセスが体系化されており、各プロセスで必要とされる知識も「知識エリア」としてまとめられています。

PMBOKを活用して、5つのプロセス「立ち上げ」「計画」「実行」「監視・コントロール」「終結」の意味と内容を理解すれば、プロジェクトマネジメントの概観が見えてきます。

問題集で勉強する

PMP試験用の問題集が市販されています。PMBOKガイドの内容を踏まえ、試験の論点が理解できるので、やみくもにPMBOKガイドを読むよりも論点を絞った学習ができます。

PMBOKガイドを読むだけよりも、問題を解くことで個々の知識について理解が定着していきますが問題集は、PMBOKを学んで基礎知識があることを前提に構成されているので、PMBOKガイドに目を通しておく必要はあります。

PMBOKを学んで資格取得を目指そう


プロジェクトマネージャーとして活躍したいと考えているのなら、PMP資格の取得を検討してみましょう。そして、試験の知識を身に付け自分に合った勉強法や教材などを選びながら、理解を深めていきましょう。

PMP資格はプロジェクトマネージャーの国際標準として認知されているので、日本だけでなく、海外のプロジェクトでも活躍できる可能性があります。

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この記事の監修者・著者

株式会社オープンアップITエンジニア
株式会社オープンアップITエンジニア
未経験からITエンジニアへのキャリアチェンジを支援するサイト「キャリアチェンジアカデミー」を運営。これまで4500人以上のITエンジニアを未経験から育成・排出してきました。
・AWS、salesforce、LPICの合計認定資格取得件数:2100以上(2023年6月時点)
・AWS Japan Certification Award 2020 ライジングスター of the Year 受賞

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