2021/05/24

AWSで量子コンピューティングを始めてみよう|AWSのBraketについてご紹介

 
  

AWSのBraketとは


Amazon Web Services(AWS)のBraketは、量子コンピューティングの環境を提供するサービスです。

アルゴリズムの設計からテスト、実行まで、量子コンピューティングに関する機能を一通り揃えています。量子コンピューティングのスタートアップとして利用できます。

AWSのBraketの機能


この項目では、AWSのBraketの機能とその特徴についてご紹介します。

量子コンピューティングを用いるには専門の知識やスキルが必要であり、習得が容易ではないという課題があります。Braketでは、量子コンピューティングの利用および習得をサポートする機能が多数搭載されており、従来の課題を解消できます。

デベロッパーツール(Braket SDK)

Braket ソフトウェア開発キット(SDK)は、量子アルゴリズムを設計・実行するデベロッパーツールです。

量子プログラムのコーディングを必要としない構造になっており、一貫した開発環境でさまざまなハードウェアを実行できます。

また、PennyLaneによるハイブリッド量子コンピューティング、Jupyterノートブックによるモデル管理といった機能も搭載されています。

PennyLane

PennyLaneは、量子コンピューター向けのオープンソースのフレームワークです。

PyTorchやTensorFlowなどの機械学習ライブラリに対応しており、ニューラルネットワークと同じ方法で量子回路を作成できます。

AWSのBraketはPennyLaneと統合されており、外部の機械学習ライブラリを参照して量子回路の作成を最適化します。

ノートブック

AWSのBraketには、マネージド型のJupyterノートブックが用意されています。

SDK、PennyLane、Oceanなど、コンピューティングに必要なツールがデフォルトで入っています。これにより、すぐにデベロッパーツールの使用を開始できます。

また、ノートブックにはチュートリアル用の構築済みアルゴリズムも用意されています。まずはこれを用いて、手順を理解していくと良いでしょう。

シミュレーター

AWSのBraketでは、3種類のシミュレーターを選択できます。

ローカルシミュレーター、SV1シミュレーター、TN1シミュレーターが存在します。これらにより、回路のタイプに合わせて最適な形でシミュレーションを実行できます。

ローカルシミュレーター

ローカルシミュレーターは、SDKの機能の一つとして含まれているシミュレーターです。

回路のシミュレーションをローカル環境で実行します。小規模な回路を素早く検証したい場合に適します。

対応可能な回路の大きさは、他の2種類より低くなっています。大規模な回路を検証したい時は、後述するSV1またはTN1がおすすめです。

SV1シミュレーター

ステートベクトルシミュレーター(SV1)は、マネージド型の汎用回路シミュレーターです。

最大34Qubitまでの回路をシミュレーションできます。汎用性が高く、さまざまなタイプの回路で利用できることが特徴です。

出典:ステートベクトルシミュレーター (SV1)
参照:https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/braket/latest/developerguide/braket-devices.html#braket-simulator-sv1

TN1シミュレーター

テンソルネットワークシミュレーター(TN1)は、特定の回路の検証に特化したマネージド型シミュレーターです。

最大50Qubitまでの回路をシミュレーションできます。スパース回路や量子フーリエ変換(QFT)回路といった特殊な構造を持つ回路の検証に適します。

SV1と比較すると、より大規模な回路にも対応できる一方、複雑な構造を持つグラフの処理能力は下回ります。基本的には汎用性に優れるSV1、上記のような特殊な回路を検証する時はTN1、といった形で使い分けていくと良いでしょう。

出典:Tensor ネットワークシミュレーター (TN1)
参照:https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/braket/latest/developerguide/braket-devices.html#braket-simulator-tn1

量子コンピューター

AWSのBraketの量子コンピューターでは、3種類の量子処理ユニット(QPU)を選択できます。

アニーリング方式を用いたD-Wave、ゲート方式を用いたIonQおよびRigettiが存在します。これらに回路やグラフなどのタスクを送信することで、回路の設計や発生している問題の解決ができます。

D-Wave

D-Waveは、アニーリング方式を用いたQPUです。

重ね合わせ、もつれ、トンネル効果などの量子力学理論を利用して、最適な問題解決法を考案します。

幅広い分野で活用できますが、特に組み合わせ最適化問題の対策・解決に適しています。

IonQ

IonQは、イオントラップの技術を応用したゲート方式QPUです。

イオントラップで捕獲したイオンの構造に基づいて、量子ビットを構築します。この技術により、幅広い規模の量子ビットの構築を可能にしています。

Rigetti

Rigettiは、超伝導量子ビットをベースとしたゲート方式QPUです。

量子コンピューターのシステムに超伝導量子ビットを導入し、計算能力を強化しています。汎用性に優れ、さまざまな分野で活用できるのが特徴です。

Quantum Solutions Lab(QSL)

Quantum Solutions Lab(QSL)は、量子コンピューティングのサポートを行うAWSのプログラムです。

既存の量子コンピューターがどのように活用できるかの評価を受けられます。また、専門家と直接連携して、量子コンピューターの構築や検証を共同で実施したり、より効果的なアプローチ法を考案してもらったりといったサポートも受けられます。

このように、AWSでは専門家によるサポート体制が整えられており、問題の早期解決、知識やスキルの強化、ワークロードの効率化などに役立ちます。

管理、セキュリティ

AWSのBraketはさまざまなAWSサービスと統合されており、管理やセキュリティ強化をサポートします。

例として、CloudWatchによるモニタリング、CloudTrailによるログの記録、EventBridgeおよびSimple Notification Service(SNS)による通知の発信、Identity and Access Management(IAM)によるアクセス権限の設定、といった機能が盛り込まれています。

また、シミュレーターや量子コンピューターによる結果はSimple Storage Service(S3)に送信され、今後の分析のために保存されます。

AWSのBraketの料金


AWSのBraketの料金は、シミュレーターや量子コンピューターなどの使用量によって決定します。

無料利用枠が存在し、SV1およびTN1シミュレーターを1時間まで無料で実行できます。

詳しくは、公式ページの料金表をご覧ください。

ノートブック

ノートブックの料金は、Amazon SageMakerの価格に準じます。

例えば、米国東部リージョンでml.t3.Mediumタイプのノートブックインスタンスを利用した場合、1時間につき0.05USDが課金されます。

多彩な種類が存在しており、料金もそれぞれ異なります。SageMakerの料金ページに一覧があるので、そちらもご覧ください。

出典:Amazon SageMaker の料金
参照:https://aws.amazon.com/jp/sagemaker/pricing/

シミュレーター

シミュレーターの料金は、タイプによって異なります。

SDKに付属するローカルシミュレーターについては、料金は発生しません。

一方、SV1およびTN1シミュレーターは、使用時間に応じて料金が発生します。SV1を使用した場合は0.075USD、TN1を使用した場合は0.275USDが1分ごとに課金されていきます。

出典:Amazon Braket Pricing
参照:https://aws.amazon.com/jp/braket/pricing/

量子コンピューター

量子コンピューターの料金は、QPUのタイプおよび実行したタスクやショットの回数で決定します。

タスクを実行した場合の料金はどのタイプも共通で、1回ごとに0.30USDが課金されます。

一方、ショットを実行した場合の料金はタイプごとに異なります。D-Waveでは0.00019USD、IonQでは0.01USD、Rigettiでは0.00035USDが1回ごとに課金されます。

出典:Amazon Braket Pricing
参照:https://aws.amazon.com/jp/braket/pricing/

AWSのBraketで量子コンピューティングを始めてみよう


この記事では、AWSのBraketについてご紹介しました。

量子回路の設計から実行までの機能を揃えているだけでなく、専門家によるサポート体制も整っており、量子コンピューティングの導入を促進します。

研究や開発に量子コンピューティングを取り入れたいと考えている方は、Braketの利用を検討してみましょう。