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VMware Cloud on AWSとは?
VMware Cloud on AWSとは、VMware Cloudによって提供される仮想システムをAmazon Web Services(以下AWS)が提供する物理サーバ上で動作させることで、クラウド上にデータセンターを構築することができるサービスです。
VMwareとAWSによって共同開発された、このVMware Cloud on AWSは「CRN’s 2020 Products of The Year」において「Best Hybrid Cloud solution based on Customer Demand」として選ばれた権威あるクラウドサービスです。
サービスの体系としては、クラウド上に保有する物理サーバを含む各種機器や、仮想基盤および仮想マシンを管理するシステム全体の集合体を1つのSoftware-Defined Data Center (以下SDDC)ととらえます。
この1つのSDDCにおいて仮想レイヤーにVMware Cloud、さらにその下の物理レイヤーにAWSという位置付けになります。
VMware社が提供しているSDDCのソフトウェアを使用することで、そこで構成したSDDCを起点に、VMware Cloud on AWSに紐づけられたVMwareおよびAWSアカウントを通じてライセンシングされた各種サービスを利用することができます。
VMware Cloudとは?
VMware Cloudとは、VMware社が提供する仮想化システムを、各種クラウド基盤上で動作させることができるシステムです。
VMware社が提供するクラウドサービス向けに特化された各種仮想化ソフトウェアの集合体で構成されています。
VMware Cloud とMicrosoft Azureを連携させたサービスをAzure VMware Solution、VMware CloudとGoogle Cloudを連携させたサービスをGoogle Cloud VMware Engine、そしてVMware CloudとAWSを連携させたサービスがVMware Cloud on AWSです。
どのクラウド基盤と連携させるかによって内包されているVMwareのソフトウェアライセンスやサポート体系が異なることに注意が必要です。
VMware Cloud on AWSを利用するメリット
メリットは大きく分けて2つあります。
1つ目は、VMware vSAN(以下vSAN)の機能と組み合わせることで、AWSによる物理的に切り離された複数の環境間でクラスタを構成し、これによる高可用性を享受できる点です。
そして2つ目は、オンプレミスで運用している既存のVMware vSphere(以下vSphere)による仮想基盤とVMware Cloud on AWSを組み合わせたハイブリッドなシステム基盤をVMware vCenter(以下vCenter)から一元管理できる点です。
既存のシステム基盤はそのままに、一部のシステムをVMware Cloud on AWSに移行するといった手段を利用することができます。
VMware Cloud on AWSが提供する高可用性とは?
VMware Cloudに含まれる仮想化ソフトウェアのー機能vSANを使うことで、AWSにおける各アベイラビリティーゾーンをまたいだクラスタを構成することができます。
これをストレッチクラスタと呼びます。メリット1点目に述べたAWSにより享受できる可用性がこれに該当します。
AWSにおいてそれぞれのアベイラビリティーゾーンは、冗長性のある電力源やネットワーク機器によってそれぞれが物理的に切り離されており、こういったアベイラビリティーゾーンごとに切り売りしてサービスが提供されています。
vSANとは、ストレージ環境を仮想化するためのソフトウェアです。このvSANもAWSに対応しており、VMware Cloud on AWSの一部として提供されています。AWSのアベイラビリティーゾーン間でのクラスタを構成するときにこのvSANの機能を使用します。
このアベイラビリティーゾーンにおいて複数間でクラスタを構成することで、一方のアベイラビリティーゾーンで障害が発生した場合でも、もう一方のアベイラビリティーゾーンが提供するリソース上で仮想マシンをダウンタイムなく利用できるようになります。
このストレッチクラスタを構成するためには、AWSにおいてアベイラビリティーゾーンごとに3台の物理サーバー(以下ホスト)の計6台分ライセンス契約をする必要がある点には注意が必要です。
シングルホストからでもVMware Cloud on AWSを利用できるので、実現したいシステムとそれに準ずるAWS環境を見据えてホスト数を選定することになります。
VMware Cloud on AWSによるハイブリッドクラウドの実現
VMware Cloud on AWSは、すでにオンプレミス環境でこれまで運用してきたvSphereによる仮想基盤と同じインタフェース(vCenter)を使用することで、既存の仮想マシンに加えてAWS上に仮想マシンを作成し管理・監視することができます。
これは、運用を担うエンジニアの負荷を減らすことができるという点で、大きな優位性を秘めています。
vCenterとは、仮想基幹システムを一元管理するソフトウェアです。vSphereを物理サーバに導入することで、仮想マシンや仮想ネットワークなどの環境を構築することができ、vCenterからそれらをまとめて管理することができます。
vCenterを導入することで、個々のvSphereに別々にアクセスして管理するのではなく、複数のvSphere環境を一括で管理することができるようになり、物理サーバをまたいで仮想マシンを動作させることができるようになります。
VMware Cloud on AWSの始め方
VMware Cloud on AWSを始めるには、大きく分けて新規・移行・両立の3つの方法があります。
1つ目は、全く新しい仮想基盤をVMware Cloud on AWSに構成する方法です。2つ目は、既存の仮想基盤をVMware Cloud on AWSに移行する方法です。そして3つ目はメリットにも上げた通り、既存の仮想基盤とVMware Cloud on AWSをそれぞれ両立させる方法です。
VMware Cloud on AWS では2つのオプション「Single Host option」および「Production Host option」が提供されており、AWSにおいて使用するホスト数に応じてサービスを購入することになります。
ライセンス契約には、VMware社と直接行う場合、AWSと行う場合、および環境構築を担うパートナーと行う場合の3種類ありますので、構築・運用を見据えて契約形態を選びます。
既存システムがvSphereによって実現されている環境であれば、より低いハードルでVMware Cloud on AWSへの移行が行えます。
それは、VMware HCXを利用して既存システムで利用している物理サーバ上から、AWSが提供する物理サーバ上に、ワークロードベースで仮想マシンを移行することができるためです。
VMware Cloud on AWSにVMware HCXが内包されており、2020年11月以降、このVMware HCXのEnterprise エディションに含まれる機能が使えるようになりました。
この場合、vSphereがバージョン5.0以降などの要件があるので既存システムのvSphereバージョンを確認するようにしましょう。
VMware Cloud on AWSを使ってみよう!
VMware Cloud on AWSを使うには、VMware側の視点から、仮想環境で何が行われているのかをイメージできるかどうかが重要になります。
これには、VMware vSphereの概念や用語に、実際に触れて手を動かしてみることが何よりの近道です。
VMwareによって提供されている「VMWARE HANDS-ON LABS」を使うことで、VMware CloudのWebコンソールからVMware Cloud on AWSのラボ環境にアクセスし、実際に仮想マシンを作成し動作させる一連の構築作業を体験することができます。
仮想マシンの作成など30分ほどで構築のメインとなる機能を実際に操作できるのでぜひ体験してみましょう。
手順内に出てくるキーワードを調べながら進めることで理解もより深まり、組織にVMware Cloud on AWSを導入する上で重要な知識を得ることができるでしょう。